2009年11月19日木曜日

ヨーロッパ毒性学会に参加してきました(2)

今回のドイツ出張は、ヨーロッパ毒性学会参加以外にもうひとつ目的がありました。それは、森千里教授を中心として千葉大学が取り組んでいる「予防医学を基盤とした街づくり(Town of Public Health Project = TOP 構想)の一環として、ベルリンのBerlin School of Public Health (BSPH) との連携を進めるために、BSPHの担当者と会うことでした。

森がインターネットで検索していて偶然見つけたBSPHですが、public health (公衆衛生)を専門とする高レベルの人材を育成する必要性を訴えてきたDr. Urlike Maschewsky-SchneiderDr. Gabriele Kaczmarczyk が中心となって活動し、2007年に開校したそうです。Maschewsky-Schneider先生はもともと工科大学にいらっしゃったとのことで、医師であるGabrieleさんと公衆衛生の学校を作らなければならない、と考えたのだそうです。

ちなみに、School of Public Health として世界で最も有名なのが、アメリカのハーバード大学のそれです。通常は大学医学部に一研究室として「公衆衛生学」の教室がある(日本の大学でもほとんどがそうです)のですが、ハーバードのSchool of Public Health は、独立した組織で、世界中から研究者が集まります。日本の厚生労働省からも、医系技官をここに派遣して学ばせています。

BSPHは、ベルリン郊外の元電球製造工場の建物を改装して、大学施設や警察署、貸しオフィスなどにしている建物群にありました。外観は1880年代の建築当時のまま残し、内部を改装したとのことで、とても美しい建物です(写真左)。

彼女らとの話の中で興味深かったのは、ドイツの有名な医師、ルドルフ・ウィルヒョウ(写真右)は、ベルリン大学(現フンボルト大学)で教授として研究・教育活動をする一方で、議会になんども足を運び、公衆衛生の充実を訴え続けていた、ということです。両先生方によれば、「政治力のない公衆衛生なら、ないのと同じだ」とのことで、確かに公衆衛生は、社会のシステムや人々の考え方を変えていくことなので、国レベルで政策や法律の変更が必要となってくるケースが多いでしょう。

ちなみに、ウィルヒョウは、森千里教授の曽祖父、森鷗外がドイツ留学時に学んだ先生です。今年(2009年)は、鷗外がドイツ留学をして125年目の節目、ということで、ベルリン滞在中に森が「鷗外が学んだ衛生学と現代のTOP構想」というタイトルで講演をしました。

場所は、旧東ベルリンの「森鷗外記念館」の講義室で、40名程度しか入れない部屋でした。それでも「鷗外なんてドイツの人は興味ないだろうし、本当に人が集まるのか」と不安でした。ところが、当日は多くのドイツの方にもおいでいただき、ほぼすべての椅子が埋まっていました(写真左)。

このベルリンの鷗外記念館は、1960年代にフンボルト大学(旧ベルリン大学)の日本語科の関係者や日本企業関係者、日本の文学界の方たちの尽力によって当時の東ベルリンで開館されたものです。

ここの事務局を長年担当していらっしゃるベアーテさんは、鷗外のことを知り尽くしているのではないかと思われるくらい、本当に詳しく研究していらっしゃいます。彼女いわく「もし漱石がドイツに来て、鷗外がイギリスに行っていたら、この記念館はなかった。鷗外は、ドイツの衛生学を勉強することを目的に来たが、彼が3年間の留学中にしたことは単に医学の勉強だけではなかった。

ドイツ語に苦労しなかったこともあり、わずか3ヶ月で後のノーベル賞受賞者の全集24巻を読みきっている。ドイツ人でもそんなに早く読めないのに、鷗外はさらに赤字でしかも漢文で注釈を入れ、驚いたことに印刷ミスには全部チェックが入っている。東京大学の『鷗外文庫』で鷗外の持ち帰った本を見たとき、そのすごさに鳥肌が立った」ということでした。鷗外は、ライプツィヒ滞在中にゲートの「ファウスト」を翻訳することを日本人留学生の友人と約束し、帰国後ファウストを翻訳しています。

今年4月、ライプツィヒの有名な老舗ビヤホール、「アウアーバッハス・ケラー」に鷗外の壁画が作られたと知り、今回ドレスデンからベルリンに移動する途中、ライプツィヒに立ち寄ってきました。ビヤホールで昼食を取り、鷗外の壁画(写真下)を見て満足し、外に出てきたところ、ドイツ人の年配の男性が近寄ってきて、「あなた方はこのビヤホールに鷗外の壁画があるのをご存知か。私は昔日本語を勉強したが、鷗外がファウストを日本語に翻訳した、というのは信じられないくらいすごいことだ」と力説されるのです。

30年前に、5年間日本語を勉強し、日本語の辞書の作り方について学んだのだそうです。「たった今、食事をして壁画も見てきた。実はここにいる森は、鷗外のひ孫だ」と話すと、目を丸くして一緒に写真を撮ってくれ、と頼まれました。

鷗外・漱石というと明治の文豪といわれますが、かつてはどの教科書にも載っていた鷗外・漱石の文章が、次々に消えていっています。今の若者たちの中で、鷗外を学校で学んだ、という人も少なくなっています。しかし、今回鷗外のドイツでの足跡を追い、鷗外記念館の鷗外関係の資料を読み、鷗外がやろうとしていたことを考えると、本当に鷗外という人は天才だったのだ、ということが改めてわかりました。

鷗外はウィルヒョウや環境医学の父と言われるペッテンコフェル(ミュンヘン大学)から、人の健康に環境が与える影響は非常に大きいこと、単に大学にこもって研究しているだけでは人の健康を守れるものではないことなどを学んだのではないでしょうか。

鷗外がドイツで成した論文で有名なものは「ビールの利尿作用について」と「ベルリン市の下水中の微生物について」ですが、実は「日本家屋の民俗学的考察」という論文も出していて、日本家屋とヨーロッパの家屋の構造や材料の違い、温湿度の違いなどを比較し、日本人の住まいと健康について論じているのです。

日本では、一般的には鷗外というと文学者というイメージが強く、明治の文豪というと「鷗外・漱石」といわれました。しかし、鷗外がヨーロッパから持ち帰ったものは、衛生学の基本、という本来の目的をはるかに超えて、西洋の文学や美術の紹介(鷗外は、「美術解剖」という本も出しています)、オペラの紹介(実際オペラの台本も書いています)、さらには当時のテクノロジーや科学の紹介もしています。

250年もの鎖国期間を経て開国した際、当時の日本人がどのように感じていたのか、非常に興味深いものがあります。特に当時の若者たちが、混沌とした世情の中にも不安をはるかにしのぐ希望、期待、夢を持っていたのではないかと想像すると、自分がその当時生きていたらどんなことを夢見ていただろうか、と考えることがあります。鷗外のようにドイツに留学でき、ちゃんと帰国ししかも立身出生を果たした人はほんの一握りでした。ようやくヨーロッパにたどり着いても、病気になり亡くなった方たち、せっかく日本に帰ってきても思うような仕事ができなかった方たちがたくさんいらっしゃるのです。そう思うと、日本が経済的に成長し、日本円が強くなったおかげで自由に海外旅行や出張ができる現代の日本人は本当に幸せだと思います。

私も1989年から3年半、カナダのケベック州のモントリオールという町にあるコンコーディア大学というところで学びましたが、発展途上国から留学している学生たちは本当に大変だと思いました。日本人は、車や電化製品の優秀さで世界中の人から一目置かれており、これも日本が発展途上にあったころの先輩たちの血のにじむような努力のおかげだ、としみじみ思ったのでした。

以前テレビで、1960年代にニューヨークに東芝の駐在員として滞在していた方のドキュメンタリーをやっていましたが、まだ1ドルが360円していたころで、お昼ご飯は屋台で買うソーセージ入りのパンだけしか食べられなかった、ということで「本当に苦労したよ」と涙ぐんでいらっしゃったのが忘れられません。そのような先輩たちの苦労を現代の私たちも忘れてはならないと思うのです。

2009年11月18日水曜日

ヨーロッパ毒性学会に参加してきました(1)

913日から16日までドイツのドレスデンで開かれていた「ヨーロッパ毒性学会」(EUROTOX2009)に参加してきました。

ヨーロッパ毒性学会は、毎年ヨーロッパのどこかの都市で開催されていて、私たちのグループ

もスケジュールが合ってその年に予算があれば出席することにしています。ヨーロッパだけで

はなくもちろん世界の各国から研究者が集まり、さまざまな毒性についての研究報告や、健康影響についての考察、改善方法、教育システムなどについて報告します。

今回私たちも、ケミレスタウンの活動の中から、ケミレス教室(シックスクール対応の教室)の提案、戸建住宅でのシックハウス対策の可能性、人の嗅覚による判定方法の可能性、化学物質に敏感な人をスクリーニングするケミレス必要度テストについて、ポスター発表してきました。

ポスター発表というのは、決められたサイズの一枚のポスターを掲示板に貼り、決められた時間、多くの人の質問に立つ、という発表方法です。

シックハウスはあまり大きなテーマではありませんでしたが、フランスの労働環境衛生に関する国の研究機関の方がたくさんの質問をしてくれました。フランスでは、室内空気中の汚染物質については基準が何も設けられていないのだそうです。日本でもホルムアルデヒドとシロアリ駆除剤のクロルピリフォスのみですが。

その方は、フランスのブドウ農場(もちろんワイン造りのための農場です)での戸外の、農薬による汚染を調べようとして、その対照(コントロール)として、その街の小学校の室内空気を調べたのだそうです。すると、建築後40年以上たつ小学校から、もう使用されていないリンデン(β-HCH)が30ナノグラム/m3程度検出された、とのことでした。濃度としてはそれほど高いわけではないのですが、問題は70年代に使用が禁止されていた農薬が、なぜ今でも出てくるのか、そして、今は濃度が低いけれども建築当初はいったいどれくらいの濃度だったのか、その小学校でずっと教鞭をとっている教師の健康にはどんな影響が出ているのか、といった点です。

まず、発生源の特定がなされました。リンデンが使用されたのは、小学校の屋根の室内側に使用された木材だったことがわかったそうです。建築の際に、この木材にリンデンをしみこませ、害虫が発生するのを抑えようとしたわけです。これがその後40年以上も室内に揮発し続けていたのです。

この研究者によれば、小学校の関係者に対して細かい説明会を何度か催し、住民や学校の先生方の疑問に答え、参加者全員で今後どうするかを考え、結局この小学校は老朽化もあって取り壊し、今はまったく新しい建物が建っている、とのことでした。彼は、「これまではいつも一方的に行政が『これこれこういう問題が発生しましたのでこうします』といって何事も決定していたのに、今回は興味のある関係者がみんな集まって結論を出したのがよかった」と言っていました。

それにしても、この小学校の汚染問題は、まれなケースなのでしょうか。調べたら、同様の事例がもっとたくさんあるのではないでしょうか。今、かつて建材の一部に使用されていたアスベストが大問題になっています。日本の大学でも、古い校舎を改修しようとしたら、壁の材料にアスベストが使用されているのがわかり、工事の期間が長引くことがあります。このような改修工事をする担当の方たちも、大きなリスクを負いながら工事をすることになるのです。

余談ですが、私がかつて新聞記者をしていたころも、アスベストが問題になったことがありました。1990年代のことです。当時環境庁長官をしていた方が理事をしていた学校の古い校舎の天井から、アスベストが見つかった、というようなことが一部メディアに取り上げられました。しかし、当時はまだ「アスベストは直接曝露しなければ問題ない」と多くの専門家は言っていたのです。たとえ天井に使っていても、封じ込められていればまったく問題ない、との意見を聞きました。私も何人かの方に取材しましたが、問題だ、と強く言う方はいらっしゃらず、記事にもしなかった思い出があります。ところが、この問題も、たとえばある医者は「アスベストを扱っていた労働者と肺の中皮腫との間には因果関係が明らかにある。直接曝露していた労働者だけでなく、家族も、周辺住民も被害を受けている。いずれ大問題になる」と地道な診療活動をして、アスベストの対策を訴えていたのですが、その声がメディアに取り上げられることはありませんでした。

中皮腫が非常に診断の難しい病気であることも原因の一つですが、やはり、「アスベストのリスクは非常に小さい」という一般的に浸透した考えがあったのだと思います。ところが、アスベストは時限爆弾のように、短期間曝露しただけでも数十年後に肺がんとなって影響が現れることがわかってきました。アスベストに曝露していた労働者の妻が、夫の作業着を洗濯していたために微量のアスベストを吸引し、それによって中皮腫になるなど、かつては誰も想像していなかったと思います。

このような現状を見ると、汚染物質のリスクの評価が非常に難しいことが改めてわかります。フランスの小学校のケースでも、長年その小学校で勤務している教師たちは、リンデン汚染によってどのような影響が出てくるのかを不安に思っているとのことですが、当然の不安でしょう。

私たちケミレスタウン・プロジェクトの研究者も、微量であっても子供やお腹の中の赤ちゃんが汚染物質にさらされたときにどのような影響が出てくるのか、よく見ていかなければなりません。近年、小児アレルギーが急増していますが、これは日本だけの現象ではありません。今年929日には、韓国から12名の医者や行政担当者らのグループが視察にいらっしゃいました。韓国でもアトピー性皮膚炎が非常に増えている、とのことでした。もともとアレルギーの素因があるところに、高気密の家に引っ越したためにそれがきっかけになったのでしょうか。もちろん、室内空気だけが原因ではなく、食物経由の汚染や日用品経由の何らかの原因物質への曝露も発症の引き金になっていることと思われます。現代社会は複雑ですので、いろいろな可能性を考えなければなりません。非常に難しい問題で、単純には結論は出そうにありません。

2009年10月20日火曜日

戸建住宅型実験棟プロトタイプ認証をだしました。

 10月15日、NPOケミレスタウン推進協会はケミレスタウンプロジェクトの参画企業のひとつである積水ハウス株式会社が建設した実験棟内の洋室・リビングルームについて「プロトタイプ認証」をだしました。これはこの2部屋が竣工後、室内空気における化学物質(TVOC)のレベルが安定して低く保たれていたためです。さらに「キッチンのステンレス流し台(クリナップ製)」および「ケミレス教室のデスクセット(イトーキ製)」についてもプロトタイプ認証をだしました。今回の認証は本年5月にシックスクールを予防することを目的とした「ケミレス教室」に対して出した第一号プロトタイプ認証に続く第二号の認証です。これらは「プロトタイプ(試作品)認証」というとおり、まだ完璧ではありませんが、プロジェクトでは、よりよい住宅環境を目指してさらに研究を推進してまいります。

2009年10月2日金曜日

韓国・京畿道の方々が来訪されました

 9月29日(火)、韓国・京畿道(キョンギド)から12人の方がケミレスタウンを見学に来られました。韓国で環境健康に関する施設群をつくるためにケミレスタウンを参考にしたいとのことでおいでになったそうです。いらしたのは行政、研究、NPO、マスメディアなどの関係者で熱心に説明を聞かれ、見学されていました。最近は韓国の方からの問い合わせやご見学が多くなってきました。化学物質や健康について興味や関心を持たれる人が増えてきたこと、シックハウス症候群の問題は日本だけではないことなどからでしょうか。影響を受けやすい子供たちが、快適に暮らせる環境を願うのは世界中どの国でも同じですので、これからも私たちは外国との連携を強くしていきたいと願っています。

2009年9月25日金曜日

国際ワークショップ(同時通訳付)が開催されます!

2009年10月15日(木),16日(金)に「持続可能な社会に向けた健康、環境と街づくりについての国際ワークショップ」が千葉大学環境健康フィールド科学センター(柏の葉キャンパス)にて開催されます。米国、ドイツ、韓国、台湾、日本の講師陣がサステイナビリティ(持続可能性)をテーマに公衆衛生、予防医学、森林セラピー、園芸療法、街づくりなどの面から講演を行います。両日とも同時通訳がつきます。参加費は無料でどなたでもご参加いただけます。(定員100名) 詳しくはこちらをご覧ください。

2009年9月23日水曜日

ケミレス独逸日記(Ⅰ)

 東京顕微鏡院の瀬戸先生と森教授をはじめとしたケミレススタッフ(戸高・中岡・花里)はドイツのドレスデンで開催されたEurotox2009(ヨーロッパ毒性学会)に参加するため9月12日(土)の夜、成田を出発しました。ベルリン経由でドレスデンに到着したのは13日(日)のお昼、雨がぱらつき、冬のように寒い日でした。この日は登録、ウェルカムパーティに参加しました。学会会場はエルヴェ川のほとりにある国際会議場で、夜の川に写りこんだ教会の光がとても印象的な美しい街でした。  ここドレスデンは第二次世界大戦の戦火で街のかなりの部分が破壊されたそうですが、戦後、以前のバロック様式の街並みを再現、復興させたということです。特にフラウエン教会(聖母教会)は東西ドイツが統合したのち、多くの人の努力で破壊された瓦礫をできるかぎり用い再建させたそうです。黒い瓦礫の石と新しい白い石のパッチワークのような教会の外見をみると、戦争の悲惨さと、街と信仰に対するドイツの人の思いを感じることができました。
 
14,15,16日はユーロトクスでいろいろな発表を見たり、聞いたり、意見交換をしたりの3日でした。ケミレスタウンについて興味を示してくださる方も多く、活発な意見交換ができました。





 17日はベルリンのフンボルト大学日本語学科の「森鷗外記念館」にて森教授がセミナーをおこないました。このセミナーには、フンボルト大学日本語学科の教授や関係者、在ドイツ日本大使館の公使も出席されました。
また、私たちがサステナの拠点として交流をしているベルリンスクール公衆衛生学部のMaschewsky-Schneider先生、Kaczmarczyk先生もいらしてくださり、セミナー後の食事もご一緒することができ、公衆衛生について少しお話をすることができました。


 18日は上記の先生をCharite キャンパスまで訪問し、公衆衛生のことこれからの交流について討議をしました。
また、Berlin School of Public Healthがどのような仕組みになっていて、どのように成り立ってきたのか、なぜ3つの大学(ベルリン工科大学、フンボルト大学、ベルリン自由大学)の統合した大学院なのか、これからどのような方向にむかっているのか説明を受けましたが、すくない教授陣(今は3人、最初は1人!だったそうです)ですばらしい教育プログラムをもっていることにとても感銘をうけましたし、多くの学生が一度社会に出たあと、再度、大学院でブラッシュアップをし、学位を取得することなどは、これからの教育の一面を見たような気がしました。Kaczmarczyk先生(カチュマチュスキ?・・うまく発音ができませんでした。)は10月のサステナ国際ワークショップで講演をしてくださるとのこと、またこれからもミーティングを重ねて、情報交換をしましょうということでお別れをしました。 

2009年9月7日月曜日

日本免疫毒性学会に参加しました。

 8月27,28日に旭川市民文化会館で開催された第16回日本免疫毒性学会学術大会にケミレスメンバー(森、戸高、中岡、花里)が参加しました。今回の学術大会テーマは「子どもと免疫」で、さまざまな角度から次世代を担う子こどもたちを守るために研究発表がおこなわれました。そのなかのシンポジウム「子どもと免疫」では森教授は招待講演として「胎児の複合汚染とアレルギー疾患との関連、そして次世代の健康を守るための化学物質の健康診断システム 」を発表いたしました。そのほか戸高、中岡、花里は「難燃剤を含めた室内空気中揮発性化学物質(VOC)によるシックハウス症候群の現状と対策」「ウェブサイト上のシックハウス症候群予防のための化学物質感受性スクリーニング“ケミレス必要度テスト”の有効性について」「化学物質による健康影響を予防するためのまちづくりの提案」でそれぞれポスター発表をしました。


 学会では特別講演として、旭山動物園の元園長小菅氏の講演もありました。旭山動物園の特徴である行動展示、能力展示はすべてサイエンスベースドであることにあらためて納得し感激しました。


 夏の旭川は涼しく、さわやかでとてもきれいな街でしたが、厳しい冬の旭川で、元気に行進するペンギンや楽しく遊ぶホッキョクグマにも会ってみたいと思います。

2009年8月18日火曜日

血中化学物質健康診断を行いました

 現在、化学物質による地球規模での環境汚染が進行しています。野生生物では、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)による悪影響が数多く報告され、ヒトにおいてもその影響が懸念されています。千葉大学環境医学診療科においては、日本人における化学物質の複合汚染を明確にし、ヒトへの影響に関する疫学調査や化学物質汚染の予防法の検討を進めています。

 そこで、8月8日(土)に研究の一環の血中化学物質健康診断としてPCB(ポリ塩化ビフェニール)の測定を行いました。これは体内のPCB濃度を測定し、高いようであればこれからの生活において食事を見直したり、化学物質を少しでも取り込まない工夫をしたりするきっかけにしていただこうというものです。健康診断の趣旨、目的が森教授から説明され、そのあと同意書に署名いただき、採血がおこなわれました。6日から交流協定の調印のため、千葉大学に来学されていた韓国・仁済大学医学部の先生方5名もこの健康診断に参加されました。化学物質の問題は日本も韓国も同じように問題となっているようで熱心にご質問されたりご覧になっていらっしゃいました。

2009年8月7日金曜日

建築学会シンポジウムに参加してきました

 8月4日(火)建築会館にて開催されたシンポジウム「室内空気中におけるアセトアルデヒド・トルエン・TVOCに関するアカデミックスタンダード」にケミレスメンバー(森、戸高、中岡、花里、須田)が参加してきました。これまで室内空気中の化学物質については、厚生労働省による13物質の指針値、TVOCの暫定目標値の制定や国土交通省によるホルムアルデヒドの規制などの対策がなされてきましたが、シックハウス症候群の問題がすべて解決されたとはいえず、実際に建物を設計・施工する立場の学会から新たな指標および化学物質の低減方法や設計基準、施工指針、濃度測定等々の提示がでたことは画期的なことでした。
 今回提示されたアカデミックスタンダードにおいての濃度基準は、アセトアルデヒド48μg/m3, トルエン260μg/m3, TVOC400μg/m3 でした。この基準は新築時においても適用されるとのことで、新築で特に木材を多用した居室についてはTVOC 400μg/m3 をクリアするのは困難である、との声もでていましたが、それでも天然の化学物質についても十分に注意する必要があり、そのためにテルペン類を含めても400μg/m3 とした、との学会側の考え方も表明されました。TVOCの定義、外気濃度の影響、測定時の温湿度など議論の余地はあると思われますが、これを機会に活発な検討や議論がおこり、それを通してヒトをとりまく環境が改善され多くの人が快適で健やかな生活をおくることができるようになることが一番大事なことです。

2009年7月28日火曜日

ケミレスタウンに大きな虹が出ました!

今日は朝ミンミンゼミがうるさいほど鳴き、よく晴れた夏日だったのですが、午後から雲行きが怪しくなり、激しい雨が降りました。そして夕方、小ぶりになると雲間から夕日が照り、そしてケミレスタウンの上空に大きな虹が現れました。

しかも二重です。あまりにきれいなので外にでてみると、大きな弧を描いて二重の虹がかかっていました。全体を写せればよかったのですが、虹が大きすぎて一枚の画像には収まりませんでした。反対側の虹は、ららぽーと柏の葉の端っこにかかっていました。


この辺りは建て込んでいないので、こんなにきれいに端から端まで虹が見えるんですね。本当にいいものを見させてもらったと幸せな気持ちになった一日の終わりでした。

2009年7月16日木曜日

韓国・釜山大学から来訪がありました

 7月15日(水)韓国の釜山大学の学部生の方たち4人がケミレスタウンの見学に来られました。釜山大学ではエコキャンパスを作るプロジェクトに参加されているとのことで、ケミレスタウンプロジェクトのホームページをみて興味を持ったそうです。私たちのホームページは日本語だけでしたので、正確に理解いただくためにまずプロジェクトの概要を説明したあと見学をしていただきました。みなさんの熱心でまじめな姿に、案内する私たちもとてもうれしく思いました。今回の訪日については韓国政府から渡航費の補助がでているそうですが、プランを立てたり、見学先の交渉などはすべて学生たちが行っているそうです。ケミレスの見学も直接彼らから電話を受けて実現しました。釜山大学の学生たちの行動力と研究に対するまじめな姿に感動し、今回の見学が何らかの役にたってくれればと願っています。

2009年7月14日火曜日

見学会を開催しました

本日の見学会には、快適住まい環境研究会24名様が参加されました。

参加されたのは、看護大学の学生さん、介護施設の方、建築会社の方、福祉機器会社の方、福祉住環境コーディネータの方などで、遠く新潟よりお越しいただきました。


学生さんは、新潟県立看護大学の学生さんで、「快適住まい環境研究会」というサークル活動をされているそうです。

ケミレスの輪が徐々に広がっているのを感じます。

真夏のような暑さの中、皆様お疲れ様でした。

2009年7月10日金曜日

環境整備をおこないました

 7月7日(火)、千葉大学環境健康フィールド科学センターの環境整備が行われました。センターの教職員、学生の皆様が汗だくで草取りなどの作業をしてくださったおかげでセンター内のケミレスタウンのまわりもとてもきれいになりました。皆様に感謝!!です。

2009年7月7日火曜日

臨床環境医学会で発表しました

 7月3,4日に岡山・さん太ホールで開催された第18回日本臨床環境医学会学術集会に参加しました。ケミレスチームは4日午前の一般口演5(座長:森教授)の中で花里研究員「ケミレスタウン・プレハブ実験棟における室内揮発物質の遮蔽及び低減方法に関する研究」、中岡研究員「シックハウス症候群予防のための化学物質感受性スクリーニング“ケミレス必要度テスト”のウェブサイト上での開発」、戸高助教「予防医学を考慮した「環境ユニバーサルデザイン」による街づくりの必要性-ケミレスタウンを例に-」の3題の発表を行いました。
 梅雨の最中でしたが、参加の皆様の日頃の行いがよいせいか、この日はお天気もよくさわやかな初夏の陽気でした。再来年(2011年)の日本臨床環境医学会は、千葉大学柏の葉キャンパスで開催する予定です。

2009年6月30日火曜日

ヨーロッパ出張に行ってきました

6月18日から28日まで、森教授、戸高助教、中岡の3人がコペンハーゲン(デンマーク)・ブリストル(イギリス)・パリ(フランス)へ出張してきました。11日間のハードスケジュールでしたが得られたものも多く充実したものとなりましたのでご報告いたします。


【コペンハーゲン】 6月19日、パリを経由してデンマークの首都コペンハーゲンに到着しました。到着時の気温は13℃、街を行き交う人たちの冬のような服装にちょっと驚きでしたが、雨が降ると本当に寒く傘をさす手がかじかんできて、みんなが着ているニットのセーターにも納得しました。滞在したのはコペンハーゲンから電車で30分くらいのベドベクという海沿いの街で、きれいなデザインの街並みと美しい花々が印象的なところでした。


 このベドベクにある東海大学ヨーロッパ研修センターで開催されたセミナーに我々は参加したのですが、センターからは海が見渡せ、そのむこうにはスウェーデンの街を見ることができました。私たちは北欧の美しさに感激すると同時に、こんなに美しい場所にセンターを持っている東海大学をとてもうらやましく思いました。
 セミナーではテーマであるエピジェネティックについて森教授が「Epigenetic alteration induced by fetal and neonatal exposure to retinoic acid and endocrine disruptors including diethylstilbestrol (DES) 」の講演を行いましたが、参加された方々が皆、とても熱意をもっておいでで、質疑応答も活発に行われました。また、最先端の研究が次々と発表され私たちもエピジェネティックについて大いに学ぶことができました。
 夏至間近でいつまでも明るく輝く白夜のデンマークで、セミナーに参加できたことはとても幸運でした。


【ブリストル】6月22日、朝早くコペンハーゲンを出発し、パリ経由でブリストルに向かいました。途中のパリで、手荷物検査もすませあとは飛行機に乗り込むだけという時に、なんということか、予定していたブリストル便がキャンセルされてしまいました。どうにか次の便に乗り込むことができ、その日のうちにブリストルに到着しましたが、パリでは8時間も空港に閉じこめられ、ブリストルには20時間ほどの短い滞在となりました。
 
 それでも、23日の午前中はブリストル大学のGordon教授をはじめNess 教授Dr. Lewis と公衆衛生大学院のこと、小児コホートスタディのことについてディスカッションをし、午後は先日のWHOシンポジウムでおめにかかったGording先生と小児コホートスタディについてお話を伺うことができました。ブリストル大学はイギリスでも有数の大学で、特に母子コホート研究については多くの経験と成果をもっています。これから小児コホートを進めていきたいと願っている私たちにとっては大変参考になりましたし、お互いに多くのことを話し合うことができました。 本当に短い滞在でしたが、ブリストル大学の先生方の次世代の子供たちの健康と環境を守ろうという強い思いに私たちも励まされ、ケミレスタウンプロジェクトに対する気持ちを新たにしました。



【パリ】パリの天気は一日のうちでもころころ変わり、涼しいのか暑いのか、晴れているのか雨なのかよくわからない安定しない日の連続でした。でもパリに着いた日がちょうどバーゲンシーズンの始まりだったようで、街中が人、人であふれかえり、おしゃれな人たちを眺めるだけでも楽しくなりました。また、たくさんのショッピングバッグを持った付き人を従えて、ブランドのお店に入って行くアラブの国のマダムを見たり、日本で有名な女優さんを見かけたり、パリの優雅な一面を見ることができました。

 パリではICSHD2009(International Conference on Sustainable Human and Social Development)に参加し中岡がケミレスタウンプロジェクトの概念であるSustainable Health Science およびEnvironmental Universal Designについて発表をしました。ケミレスタウンはこれらの概念の試みであり、私たちのプロジェクトは、環境から影響を受けやすい胎児や子供たちを基準にした街づくりや環境改善型予防医学を提案していることを海外にも伝えることができればと願っています。

2009年6月26日金曜日

6月27日(土)公開セミナーを行います

予防医学センター 公開セミナー

  日時:2009年6月27日(土)
      13時30分より14時30分
  場所:千葉大学環境健康フィールド科学センター
      ケミレスタウンテーマ棟講義室
  テーマ:救急医療(AEDの使い方)
  講師:増茂誠二:千葉大学大学院医学研究院環境生命医学
         (国際医療福祉専門学校救急救命学科学科長)

参加無料・どなたでもご参加いただけます。
皆様お誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。

2009年6月12日金曜日

6月13日(土)公開セミナーを行います

 ケミレスタウンは平日と毎月第2、第4土曜日の午後1時から5時まで公開されており、土曜日午後は、千葉大学予防医学センター主催の「公開セミナー」がケミレスタウンテーマ棟講義室で開催されます。6月13日(土)は「ケミレスタウンとは」というセミナーを千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の戸高が行います。シックハウス症候群やケミレスタウンプロジェクトという取り組みを学んでみたい方はぜひご参加ください。 参加費は無料でどなたでもご参加いただけます。

  予防医学センター 公開セミナー

  日時:2009年6月13日(土)
      13時30分より14時30分
  場所:千葉大学環境健康フィールド科学センター
      ケミレスタウンテーマ棟講義室
  テーマ: ケミレスタウンとは
  講 師: 戸高恵美子・千葉大学助教

以後のセミナーにつきましては、近日中にHPにアップする予定です。

WHO国際会議に出席しました

 森教授をはじめケミレススタッフは6月5日から10日まで韓国・釜山を訪問してきました。今回の訪問は仁済大学(Inje University)医学部においてのセミナー開催と第3回WHO子供の健康と環境に関する国際会議 (The 3rd WHO International Conference on Children's Health and the Environment) で発表のためです。




 連日、盛りだくさんのスケジュールでしたが、世界中から多くの人が集まって、次世代の健康と環境を守るために今なにをしなければならないか話し合う場に参加できたことは、我々ケミレスタウンプロジェクトスタッフにとってとてもすばらしい経験で大変実りあるものでした。WHOの会議では、イトーキの加藤氏や留学生のTessaさんとも合流し、いくつかのセッションに参加しました。これらの発表や討論を通して、資金の問題、開発途上国の事情など困難なことは山積みだけれども、それでも私たちの子供の「健康と環境」を守ることはなににおいても優先しなければならないことだということがよくわかりました。また、ケミレスタウンプロジェクトが、「未来世代がよりよい環境で、健康で快適な生活を享受できること」を目指し、「未来世代のための街づくり」のために活動することは重要なことであり、必要なことだということをあらためて認識しました。




  WHO国際会議では森教授は招待をされており「5Persistent Organinc and other pollutants: assessing and preventing exposure」において「Application of health examination system of total PCBs to prevent prenatal and lactational exposure of persitent organic pollutants(POPs)」のプレゼンテーションを行いました。そのほか、ケミレスでは戸高助教が「"Chemiless House" as an example of a house under the concept of the "Environmental Universal Design" for Children's Health」、中岡研究員が「Necessity of "Chemiless Lecture Room" for Healthy School Environment」のポスター発表を行いました。



2009年6月2日火曜日

ミネソタ大学から留学生がきています

 米国、ミネソタ大学大学院生のTessa Somermeyerさんがケミレスタウンプロジェクトについて学ぶために来日しています。米国では公衆衛生学を専攻している修士課程の学生で、千葉大学ではケミレスタウンや予防医学について勉強しています。学部生の時にも一度来日したことがあるとのことで、お米のご飯、日本茶、そばなどが大好きだそうです。ミネソタ大学でもケミレスタウンのようなモデルタウンをつくる計画があるとのことですが、日本のプロジェクトについてもしっかり学んで ほしいと願っています。

2009年5月25日月曜日

ケミレスギャラリーを公開しています

 しばらくお休みをしておりましたが、ケミレスギャラリーが再オープンされました。濃い緑に囲まれたギャラリーで、シックハウスのことを少し学んでみませんか。開館時間は、平日および第2,4土曜日の1時~5時(最終入場時間:4時30分)です。

 くわしくはNPOケミレスタウン推進協会HP http://chemiless.hp.infoseek.co.jp/ をごらんください。(測定や実験の都合で、閉館する場合もありますのでHP内のカレンダーでお確かめの上、お出かけください。)

 第2,4土曜日には、ケミレスタウン講義室にて予防医学センター公開講座も予定しています。次回は6月13日(土)1時30分からケミレスタウンプロジェクトについての講演を行います。その後の日程など詳細が決まりましたら、ケミレスタウン推進協会HPなどでご案内いたします。

中間報告会を開催しました

5月13日(水)、学校、報道関係の方々においでいただきケミレスタウン・プロジェクト中間報告会を千葉大学環境健康フィールド科学センター、シーズホールにて開催しました。この報告会では、ケミレスタウン講義室を学校教室のプロトタイプとして認証することを発表し、「シックスクール症候群」を引き起こしにくい空間づくりを社会に提唱しました。学校などの室内環境が原因で「シックスクール症候群」に苦しむ子供たちがすこしでも減り、彼らが健康で快適な生活を享受できる街づくりの第一歩となることを願っています。
 この日は同時にユニラボ(ユニットラボラトリー/居室ユニットの提案)や住宅ラボ(戸建型実証実験棟)の公開もおこないケミレスタウン・プロジェクトの進捗状況をご覧いただきました。

2009年4月14日火曜日

アメリカから大学院生が来訪しました

4月7日午後、カリフォルニア大学ノースリッジ校大学院生のChris Aguillonさんが森教授を訪ねてケミレスタウンを訪問されました。Chrisさんは米国で環境、労働保健を専攻している学生で、環境改善型予防医学をテーマに活動している「ケミレスタウンプロジェクト」に興味を持たれたようです。この日はケミレスタウンの実験棟を見学したり、森教授との討論をとても楽しんでいらっしゃいました。5月にはミネソタ大学の大学院生が1ヶ月の研修に来日する予定で、「ケミレスタウン」も国際的になってきました。

2009年3月31日火曜日

ユニラボの内装が完成しました

 ユニラボ(ユニットラボラトリー・居室ユニットプロトタイプ)の内装工事とその後の空気質測定が終わりました。あとは家具が入れば完成、という状況で、皆様にご覧いただけるのも間近です。
 
今回、プロジェクトが提案しているのは




         ユニラボ1: キッチン


 
ユニラボ2: 寮 


 

             
ユニラボ3: リビングルーム



の3ユニットです。プロジェクトの参画企業と協力し、部材や施工方法を吟味しながら化学物質を低減した居室ユニットを作製しました。一般公開ができるようになりましたらホームページでご案内をしますのでぜひいらして、実際に体感してみてください。

2009年3月13日金曜日

ユニラボ内装工事が始まりました。


ユニラボ(ユニット・ラボラトリー)の内装工事が始まりました。

居室ユニットはそれぞれキッチン、リビング、寮をイメージした内装です。

3月末までに完成し、その後空気測定をする予定です。

改修工事が進んでいます(その4)

テーマ棟環境医学診療科の改修工事は壁面工事に入りました。
石膏ボード、壁紙が貼られています。