2008年1月2日水曜日

シックハウス症候群とは part3

環境ユニバーサルデザインの街づくり

「ユニバーサルデザイン」という言葉が最近よく使われるようになっています。「ユニバーサル(universal)」とは、万人に通じる、とか普遍的な、とか全員に共通する、などといった意味です。従来よく使われていた「バリアフリー」とどう違うのでしょうか。

アメリカの建築家で自ら車椅子生活を送っていたロン・メイスという人は、身障者用にデザインされたものが、種類も限られ、価格も高いという現実をなんとか変えたいと思っていたそうです。そこで、「改善または特殊化された設計なしで、最大限可能な限り、すべての人々に利用しやすい環境と製品のデザイン。または、製品、建物、環境をあらゆる人が利用できるようにはじめから考えてデザインするという概念」である、ユニバーサルデザインを提唱しました。

事故や病気、高齢によって身体が不自由になると、それまで当たり前にできていたことができなくなります。歩く、食べる、排泄をする、入浴する、そういったことができなくなると、人はその日から生活に困る事になります。

少し前、高齢化が話題になり始めた頃、介護をする家族が家のリフォームをしたり、公共の施設が身体障害者の方に使いやすいように建物の段差をなくす工事をするなど、「バリアフリー化」が各地で行われました。それは非常に素晴らしいことなのですが、一度完成しているものに手を加えるとなると、大変なコストがかかることになります。場合によっては、バリアフリーにしたくても、もともとの設計の関係で、不可能なこともあるでしょう。

今も各地の駅構内などでは、エレベーターやエスカレーターの設置工事を行っていると思います。東京のJRお茶の水駅は、周辺に多くの大病院があるにもかかわらず、駅構内にエレベーターやエスカレーターがなく、患者さんにとっては「魔の駅」だったと聞いたことがあります。

そのようなところにエレベーターができれば、病気の方はもとより、お年寄りやベビーカーを押している方も助かることでしょう。しかし、元々ないところにエレベーターを設置するのですから、大変なコストがかかる上、利用者にとっても工事中は不便この上ないことになります。エレベーターを設置できる場所も限られており、「なんでこんなところにエレベーターが?」と思うような不便なところに設置されることもあります。

誰しも、今は元気であってもいつなんどき、事故や病気で身体障害を背負う事になるかわかりませんし、老いはもちろん誰にでもやってきます。そう考えると、駅をつくるにも、最初からお年寄りや障害者のことを考えてトイレも障害者対応に、エスカレーターもエレベーターも設置しておいた方が、設計も美しくできるし、コストも割安ですむのではないでしょうか。

最近では、ユニバーサルデザインによる建設が少しずつ導入されており、エレベーターは車椅子対応のものが設置されています。多くのビルのトイレに、最初から身障者対応になった個室がついています。このような設計は、身障者の方が利用する予定がなくても最初から建設の際のデザインに取り入れてあったために、将来身障者の方が利用することになったとして、その際にわざわざその方のためだけにデザインしなおし、リフォームするよりはずっとコストが低くて済むし、デザイン的にもしっくりきます。

ほかにも、ちょっとした段差であっても、車椅子の方や足の不自由な人には不便なことがあります。だから、最初から段差をつくらないようなデザインになっていたりします。これも、障害者はもちろん、健常者にとっても助かる工夫です。健常者であっても、床の段差や電気のコードなどにつまずくことはよくあるからです。

また、文房具メーカーも、健常者も身体の不自由な人も一緒に使える、ユニバーサルデザインのおしゃれな文房具を開発しています。健常者にとってなんらマイナスがなく、身障者の人も人生を楽しむことができる、そこがユニバーサルデザインの斬新なところです。全人口に比較すれば、身障者やお年寄りの数は少ないのですが、それらの人を基準にすれば、ほかの多くの人にとって暮らしやすい社会になります。 part4へ続く

戸高恵美子(千葉大学 環境健康フィールド科学センター 助教)

上記の内容は、森・戸髙の共著『へその緒が語る体内汚染』に詳しく紹介しています。