10月22日から25日まで森教授、戸高助教と中岡は、国立台湾大学公共衛生学院で開催された千葉大学・台湾大学合同の大学院課程「サステイナブル環境健康科学集中講義」に参加するため台湾台北市を訪問しました。
集中講義に先立ち、台湾教育省(日本の文部科学省)を訪問し、台湾におけるサステイナビリティに関する取り組みについて説明を受けたあと、実際に実践している台北市南部の小学校を訪問しました。この小学校を訪問する前は「なんで私たちが小学校へ行くの??」という声がちらほら聞こえていましたが、教職員、PTA、地域の人たちが本当に熱心に環境問題に取り組んでいること、その取り組みが現実に成果となってきていることを目の当 たりにしてみると訪問者一同感心することしきりでした。その上、給食をごちそうになったり、お昼寝をしている子供たちを見たり(台湾では給食の後はお昼寝の時間があります。)した後では「来てよかったね。」とみんな喜んでいました。
小学校訪問の後は、国立台湾師範大学でグリーンルーフやエコガーデンなどを見せていただきました。グリーンルーフとは大学建物の屋上で緑化を進めているところで、野菜を育てたり、太陽熱を利用して料理ができる器具や雨水を利用したシャワーなどがあり学生たちのパーティなど使われているそうです。エコガーデンは雨の多い台北特有の気候に配慮されてつくられており、排水を濾過させた水を使用したり、浄化作用のある水生植物を育てたりして工夫されたエコポンド(池)がありました。 このエコガーデンがある一角は緑が濃くて、暑い (10月末でしたが日本の夏のような気候でした。) 台北でも涼やかな風が吹いていました。
集中講義は10月24日、国立台湾大学公共衛生学院で行われました。学部長のChiang先生のご挨拶からはじまり、森教授、戸高助教の「サステイナブル環境健康科学」についての背景と将来のビジョン、ケミレスタウンの説明がありました。国立台湾大学ではすでに大学院においてサステイナビリティ学についてのコースがスタートしているそうですが、森教授の提唱する「サステイナブル環境健康科学」について、また、ケミレスタウンについては、多くの学生に関心と興味を抱いていただいたようでした。
その後、公衆衛生学について台湾、日本、アメリカのそれぞれの国の背景、概念、現状について国立台湾大学Chan 教授、ミネソタ大学Toscano教授、千葉大学の羽田教授から講義がありました。これらの講義は3カ国の公衆衛生学の講義を続けて受講することができるという素晴らしい機会でしたし、国の歴史や事情、国民性によって考え方、取り組み方に違いがあることがよくわかり大変印象深いものでした。
集中講義では、そのほかに、台湾における気管支喘息、アレルギー性鼻炎およびアトピー性湿疹の現状、環境疫学の講義が国立台湾大学病院のGuo教授から、食の安全性に関する知見と食品分析方法の最新の動向について国立台湾大学Chen副教授から、台湾における作業領域での安全な曝露指針の提案と題し、作業領域下でのリスクアセスメントについての講義がWu副教授からありました。どれも最新の情報が公表され、興味深いものでした。
この集中講義は、ほとんど休みなく行われ、ハードな講義ではありましたが、熱心な先生方のおかげで、受講した千葉大学、国立台湾大学の大学院生にとっては素晴らしい経験となりました。また、講義終了後、両国の大学院生たちがスピーチを行い、情報交換もでき中身の濃い一日でした。
集中講義の開催を快く引き受けてくださったChiang学部長、集中講義をアレンジしてくださったChan教授、いつもにこやかに迎えてくださるLin教授、緻密な作業と細やかな心遣いをしていただいたChan研究室のアシスタントのTzu-Peiさん、Donnaさん、およびRo-Tinさん、Maggieさんをはじめとする国立台湾大学大学院生のみなさん、素晴らしい時間をありがとうございました。これからも情報を交換しながら、サステイナブル健康科学の概念を広め、未来世代の環境と健康を守るために、一歩ずつ前へ進んで行けたらと願っています。
今回の台湾訪問では、集中講義以外にも、視察をさせていただいた台湾教育省や小学校の関係者の皆様、国立台湾大学医学部解剖教室の皆様、ありがとうございました。近いうちに皆様に、ケミレスタウンをご案内する機会があればと思います。ぜひ日本に遊びにいらしてください。
中岡(千葉大学サスティナビィリティ学アソシエーション研究員)